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2022年度 京都芸術大学 卒業展・大学院修了展
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2022年度 京都芸術大学 卒業展・大学院修了展
新たな枠組みを作れるか
京都造形芸術大学で開催される卒業展・大学院修了展の広報物、会場マップ、図録、ウェブサイトのビジュアル等のデザインを担当しました。
今回のキービジュアルは、「手」をモチーフにしています。
制作のスタート
本年度も、広報担当の4回生の方々数十名への対面インタビューから始まり、その後Googleformを利用して、4年間を通して学んだ「芸術」に対しての考えや感情を掘り下げていく事から始めました。
Nekiからの問いかけは、
「京都芸術大学を受験した理由を2つ教えてください。」というような、比較的簡単な質問から始まり、
「これからの日本で、芸術系の大学はどんな事の役に立っていける(面白いことをしていける)と思いますか?」
「」8年後の世の中を想像した時、どのような世の中になっていて欲しいですか? また、その世の中をつくる為に芸術はどのように役に立ちそうでしょうか?」
というような、抽象度の高い質問まで、さまざまな問いかけを行いました。
学生の皆さんに共有したコンセプトテキスト
以下のテキストは、Neki inc.坂田が学生の皆さんへ向けて書いたメインビジュアルのコンセプトテキストです。
長文ですが、よろしければ是非ご覧ください。
*
本年度の卒展のグラフィックデザインを考える上でテーマとしたのは、「新たな枠組みをつくる」「リフレーミングする」といったキーワードです。
学生の皆さんへの対面インタビューやGoogle formへの回答で私が感じたのは、今この時代に大学生として生きている皆さんが感じている、現状の社会・世界への戸惑いや、ある種の諦め、そして、それらを感じながらも、未来の何かに表現をつなげようとする、したたかともいえる姿勢や思考・目線でした。
SNSのようなオンライン上で、「炎上」などの形で露見するコミュニケーションの問題、マジョリティとマイノリティをめぐる話題の中で顕在化する理解や誤解、寛容と不寛容がからまりあった問題、AIの技術利用が研究室を超えて、無視できないレベルで私たちの生活や仕事に影響を及ぼし始めている問題、そして、今も変わらず存在する事をまざまざと見せつけられた、戦争という問題。
私たちはそれらの問題に対して、日々不安やストレスを感じながらも、それらをうまく消化できず、自身の中で納得するだけの「新たな枠組み」を全く見つけられずにいるように思います。
そのような現在において、「芸術」という分野で活動する私たちは、ものごとの考え方や、価値観、世界観に「新たな枠組みを見出すこと」を強く求められている(求めている)、とも感じました。
「芸術に何ができるだろう?」という問いに対して、「芸術には、価値観や、世界の見方に対して、新たな枠組みをつくる事ができるのではないか」という事を、社会に対してと同時に、これから社会に出ていく学生の皆さんに対しても、メッセージとして発信できると良いのではないか、と考えました。
「芸術」というものが、私たちを次の未来に連れていくような、新たな価値観の枠組みを生み出すとき、それは一体どんな枠組みであり得るでしょうか?
京都芸術大学の卒業展は、きっとその可能性の一端が垣間見れるような展覧会になると考えています。